2014年2月14日金曜日

7「同じく肉は食べられないヤツでも、今度は普通のベジタリアンが現れた。」

 5.

 オレの仕事はもっぱら解体なんだけど、愛嬌があるとかでたまにレジ番をさせられる。本当はやなんだけどね。可愛い声を出して誘いだし、店の裏でキュっと締めて血抜きして、バラしてダマしてあなたの食卓へ。なんつって。

 たまにレジに立つと変な客がくる。陳列台の前で肉を睨みつけ、脂汗を流して息も荒い。肉が好きなのかな?と思って見ていると、何も買わないで帰ってしまう。変な客だと思ったけど、それが二度、三度となると気になる。先輩に聞いてみる。

「ああ、あいつは人の8倍くらい肉が好きだけど、アレルギーで肉は食えないヤツなんだ。」
「へぇ。だから買わないんすか。」
「今度来たら見てみ。【略】。ぐふふ。」
「はぁ?」

 遠目にじっと確認してみると……【略】どうやら食欲だけじゃあなくて【略】肉は食べられないのに、そのパワーはどこから?豆かな?豆はすごいらしい。何か話でもしてみようとレジから出ると、さっと店から出て行った。なんなんだあいつわ。

 同じく肉は食べられないヤツでも、今度は普通のベジタリアンが現れた。区役所で会ったアイツだ。

「あいにくトリ肉は扱ってませんぜ。ダンナ。」
「仮にあったとしても、鶏肉も食べないんだ。」
「じゃあ、お魚は?」
「魚も食べないよ。」
「へぇ。じゃあ今日は何をお探しで?モツですか?」

 野菜以外食わないっつーの!みたいなツッコミを期待してバカみたいな質問を続けてみたけど、慣れているのか、ベジタリアンは特に気にする様子もなく、するっと話題を変えた。

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